パイロット知識

【HF】SELCALとは?

今回はHFでの通信を行う時に必要になるSELCAL(セルコールまたはセルカル)についてです。
旅客便でFlight Planの第18項に記載されていて、なんだこれ?と思った方は多いのではないでしょうか?

国内線ではほぼ使用しません(私は使ったことはありません)が、国際線を運航する上では便利なものですので、今回使い方も含めて紹介します。

SELCALとは?

SELCALは“Selective Calling System”の略です。
航空実用辞典では以下のように説明されています。

 地上無線局が特定の航空機と交信したいときに,呼び出す装置。
各航空機にはそれぞれ異なったコード(四つの低周波の組み合わせ)が指定されており,地上局がHFあるいはVHF通信装置を介して目的の航空機にコードを送信すると,それを受信した航空機のうち,指定されたコードと一致する航空機のみが,操縦室でライトを点灯させると同時にチャイムを作動させて,パイロットに地上局から呼び出されていることを知らせるものである。
この装置により,パイロットは受信音声に絶えず注意を払っていなくても地上局からの呼び出しに応じることができる。

航空実用辞典



SELCALは飛行機毎に4文字のアルファベットが割り当てられているもので、管制官が特定の飛行機を呼び出すために使用するものです。

↑JP-FGがSELCAL CODEです。

SELALのなんのために使う?

簡単にいうと、「SELCALはHFを常に聴取しなくて済むようにする」ために使用します。

常にATCを聴取しなくていいの?と思いますよね。

当然、「VHF」で管制官とやりとりをしているときは常にATCを聴取しています。
しかし、洋上などVHFが届かないエリアでは、「HF」を使用して管制官と通信を行います。

HFの特徴として、「電波が遠くまで届く」というメリットがありますが、その反面「音声には雑音が入る」というデメリットがあります。
常にテレビの砂嵐のようなノイズが入っています。
HFを使うようなエリアでは、ATCをする回数は少なく、雑音を聴き続けるのは大変です。

そのため、必要な時だけHFを聴取できるようにSELCALが使用されます。

SELCALの使用方法

ここからSELCALを実際の運航でどのように使用しているかを紹介します。
まず、SELCALを使用するためには、「SELCAL Check」といってSELCALがしっかり機能することを管制官と確認する必要があります。

SELCAL Check要領

今回は一例として、San Francisco(SFO)を呼び出す時のやりとりを紹介します。

JL10(JAL10便)
San Francisco(SFO) Primary13339/Secondary 17931
P:Pilot
C:管制官

P:SFO SFO JL10 on 13(339).
C:JL10 SFO Go ahead.

P:JL10 We have CPDLC Connection. Request SELCAL Check.
C:Roger. This Frequency Primary. Secondary 17931. Standby SELCAL Check.

 —-SELCALのMSGと音を確認—-(※1)

P:SELCAL Check OK. Secondary 17931.

※1 管制官はSELCAL Codeを用いて自機を呼んできます。
飛行機ではピンポンの音と共に、コックピット内の画面に「・SELCAL」と表示されます(Boeingの場合)。

SELCAL Check後

洋上ではCPDLCで基本的にやり取りをするので、HFでのやりとりはほぼありません。
CPDLCが不具合で使用できない場合などで必要な時に、管制官がSELCALを使用して呼び出してきます。
SELCALで呼び出されたら、HFの音量を上げて、管制官と通信を行うという流れになります。

まとめ

以上です。SELCALについて理解していただけましたでしょうか?
昔はCPDLCもなく、ずっとHFで通信しながら国際線を飛んでいたそうです。
どんどん便利な時代になってありがたいです。

また次の記事をお楽しみに!