2022年3月13日に「渋谷区のテニスコートに氷塊が落ちた」というニュースが出ました。
その後、国土交通省が5月19日に「氷塊が航空機から落下した可能性は極めて低いので、調査は必要ないと判断した」と発表しました。
その発表に対し、少し疑問に思うことがありましたので、記事にさせていただきました。
この記事では、飛行機から氷塊が落ちる仕組み、今後落ちるとしたらどのあたりに落ちる可能性があるのかを含めて紹介します。
経緯
2022年3月17日の東京新聞に以下のニュースが掲載されました。
2020年3月に運用が始まった羽田空港(東京都大田区)の新飛行ルートを降下中の航空機から今月13日、渋谷区内のテニスコートに氷塊が落下した疑いがあるとして、国土交通省が事実関係を調査していることが分かった。
渋谷区によると、14日夕、区役所に匿名男性から「13日午後3時半ごろ、区内のテニスコートに航空機から小石くらいの氷塊が落下した」と電話があり、国交省に連絡したという。
国交省は取材に、この時間帯に新ルートを航空機が降下したことを認める一方、「事実関係を調査中。航空機から落下したかは分からない」としている。新ルートは羽田空港への着陸航路として、新宿区や渋谷区などの上空を北西から南東に向け、並行する2本を設定。南風時の午後3〜7時に運用している。
2022年3月17日 東京新聞
テニスコートは2本の航路の間にあり、JR新宿駅の南西約1.5キロに位置し、航空機は上空900〜1000メートルを通る。
テニスをしていたら、すぐ近くに氷塊が落ちてきたというニュースです。
今回は、直接人に当たることはなく事なきを得ましたが、人に当たっていたらと考えると非常に怖いですよね。
羽田空港(東京都大田区)の新飛行ルート直下に近い渋谷区のテニスコートで今年3月に氷塊が見つかった問題で、国土交通省が、当時付近を飛行していた航空機が着陸のためにいつ車輪を出したかの調査をしないと決めたことが19日、同省への取材で分かった。
2022年5月19日 東京新聞
以上のように、国土交通省は「氷塊は飛行機からではない!」とし、その後の調査をしない事を発表したのです。
都心上空の経路の概要
ここで一度、都心上空を飛行する経路についておさらいします。
都心上空を飛行する経路になる条件は以下の2つです。
- 15時から19時の中の3時間
- 南風が吹いている
これらの条件が揃うと、RWY16LとRWY16Rという名前の滑走路(RWY16L(C滑走路),RWY16R(A滑走路))を使用し、都心上空を飛行して羽田空港に着陸します。
今回、渋谷区に氷塊が落ちたのは15時半ころですので、都心の上空を飛行機が飛んでいました。
氷塊が落ちる仕組み
飛行機から氷塊が落ちるのは、およそ決まったタイミングがあります。
それは、飛行機が着陸に向けて、車輪を出す時です。
飛行機から漏れる水が上空で凍り、車輪を出す時に氷が機体から剥がれて落下するのです。
特に国際線を飛んできた飛行機は飛行時間も長くなるため氷がつきやすく、氷塊が落ちる可能性が高いとされています。
氷塊が落ちやすい場所
RWY16LとRWY16Rに向かって都心上空を飛行する際、車輪を出す場所は決められてはいません。
詳しい説明は省きますが、騒音軽減のため羽田空港に進入する降下角は急になっており、ほとんどの飛行機が下の図の黄色の線で囲まれた内側で車輪を出します。
以上の黄色の線で囲まれているエリアでは氷塊が落ちる可能性が高い場所になります。
RWY16Rに着陸する飛行機は、「中野から初台駅の付近」、RWY16Lに着陸する飛行機は「大久保から明治神宮の付近」です。
今回の氷塊が落ちた大正セントラルテニスクラブは初台駅の近くに位置しますので、氷塊はRWY16Rに向かう飛行機から落ちたのではないかな…と個人的には思います。
個人的見解
今回のようなことが起きても、国は調査をしないと発表しています。
都心上空を通る経路は、運用が始まる前から安全性に懸念があると反対運動が起こっていましたし、現在でも反対運動は続いています。
コロナ禍で羽田空港に離発着する便数が減っていますが、今後国際線が増えてくると、さらに氷塊が落ちる件数は増えると予想します。
怪我人が出てからでは遅いはずです。
無理やり計画をすすめるのではなく、一度立ち止まって再考する必要もあるのではないのでしょうか?
成田空港では海で車輪をだしてから陸地に入ってくるというように工夫されています。
このような対策が出てくることを期待します。