パイロット知識

速度調整の終了時期【管制方式基準】

今回は「速度調整の終了時期について」です。
管制官が間隔の設定が必要だと判断した時に、速度調整が行われますよね。
その後、いつ速度調整が終了するのかについてまとめてみました。
最後によくある事例についても載せていますので、最後までチェックしてください。

文献【管制方式基準 Ⅳ-9、AIM-J 623,658】

速度調整できる範囲

管制官が飛行機に速度調整ができるのは、以下の範囲です。

  1. ILS進入の場合
    アウターマーカーもしくはこれに相当するDMEフィックスまたは接地点から5海里の地点のうちいずれか滑走路に近い地点
  2. 視認進入の場合
    ベースレグへの旋回開始地点または滑走路進入端から5海里の地点のうちいずれか滑走路に近い地点
  3. ①②以外の場合
    滑走路進入端から5海里の地点

以上が管制官が速度調整を指示することができる範囲となります。
注意点は、ここまでの間で速度調整をできるということですので、
この地点で自動的に速度調整が終了するということではないということです。

速度調整の終了

速度調整の必要がなくなった場合は、次に掲げる場合を除き、速やかに航空機に対しその旨を通報されます。

  1. 待機を指示された場合
  2. SID/Transitionによる上昇、STARによる降下が指示された場合
  3. 進入許可が発出された場合
  4. レーダー進入において接地点から5海里の地点または最終降下点のうちいずれか接地点から遠い方の地点を通過した場合
  5. 速度を維持すべき地点を明示されたのち当該地点を通過した場合

以上の5つは自動的に速度調整が終了します。
それ以外では、管制官が速度調整を終了するとき、「Resume Normal Speed」「Resume Published Speed」の用語が使用されます。

実例

以下の2点が、注意が必要な事例です。

①ACCで速度調整を受けていてApproachに移管される場合

Enrouteからの降下中、よくACCから速度調整を受けます。
ACCからACCに周波数が変わる時は、速度調整をそのまま引き継ぐことがほとんどです。

ただ、ACCからApproachに移管されるときには、「Resume Normal Speed」と言われて速度調整が一旦終了します。
なぜなら、移管のタイミングでACCが行わなければならない間隔の設定は終了しているからです。
Approachでは、さまざまな方向から飛んでくる飛行機に対して間隔設定が必要なので、改めて、速度調整が指示されます。

しかし、たまにACCから「Normal Speed」を指示されずに、「Contact Tokyo Approach」とだけ言われることがあります。
その場合は、「Confirm Resume Normal Speed?」と確認した方がいいです。
8、9割は「Normal Speed」を言うのを忘れているからです。

②ApproachでClearance受領後に速度調整をされる場合

Approach Clearanceを受領すると自動的に速度調整が終了しますが、Approach Clearance受領後に速度調整が再度行われる場合があります。
その場合、以下の3点であれば問題ありません。
ILSで飛行している場合を例に取ります。

  1. 速度を維持すべき地点を明示する場合
    例)Reduce speed to 170kt until 5DME.
    →5DMEを過ぎたら、減速が可能です。
  2. さらなる減速が可能な指示
    例)Reduce speed to 170kt or less.
    →170kt以下に減速すれば良いので、170ktを維持する必要はありません。
  3. TWRに管制移管する前に、Normal Speedを指示する場合
    例)Resume Normal Speed.Contact TWR 118.1.
    →Normal Speedが改めて指示されたのでそこから減速可能です。

それ以外の場合で、
例えば「Cleared for ILS Z 34L Approach. Reduce Speed to 170kt」と指示された後、しばらくして「Contact TWR」と言われた場合は、どこまで170ltを維持すればいいのでしょうか?

速度調整可能な範囲が、ILSの場合は5海里となっているため、5海里で自動的に速度調整が終了すると考えている人がたまにいますが、これは正しくありません

この場合は
Contact TWRと言われたときに「Confirm Normal Speed?」と確認すべきです。

なぜなら、この場合も管制官が維持すべき地点等の指示を忘れていることが多いからです。
管制官も人間ですので、時間的な余裕がなく、指示した速度を維持する地点を明示するのを忘れることがあります。

まとめ

以上が速度調整の終了するタイミングについてです。
あれ、これってもうSpeed絞っていいんだっけ?となることがあります。
正しい知識をつけて対処するのが理想ですが、相手が見えない中でのやり取りですので、意図が伝わりにくいのが現状です。
分からなければ、適当に行動するのではなく気軽にConfirmしましょう。

次回もお楽しみに!